4月17日〜23日、新疆ウィグル自治区の、かつてのシルクロード「天山北路」をたどり、カザフスタンの国境近くまで行きました。
新疆は、中国の最も西にあり、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、パキスタンとの国境の地です。ほぼ真ん中に、東西に貫く天山山脈があります。天山山脈は、ずっと西のキルギス、タジキスタン、ウズベキスタンまでのびる長い山脈です。
天山山脈の南側は、ほとんど雨が降らないタクラマカン沙漠になっていて、オアシスをたどるシルクロード「天山南路」があります。天山山脈の北側には、いくらか雨が降るため、草原が広がっていて、天山北路は、「草原の道」とも呼ばれます。
旅の1日目、羽田から北京へ飛び、乗り換えて、新疆の中心都市ウルムチに向かうと、やがて、飛行機の窓から見える地上の景色は、薄茶色一色になりました。この内モンゴル自治区の沙漠が延々と続きました。
北京から約4時間、地上の景色に畑や草原の緑が見えてきたら、新疆ウィグル自治区です。雪を頂く天山山脈の山々や氷河も見えます。
ウルムチに着いたのは、午後8時頃でしたが、空は、とても明るい。中国は、全国で北京時間を使うため、北京から西に約2400km離れたウルムチの空の明るさだと、午後5時くらいの感じです。
新疆内の旅のルートは、天山山脈の北側を、ウルムチ→石河子→クイトン(奎屯)と西向きに進み、さらに、クイトンから北西へ進んで、カザフスタンの国境近くのセリム湖(賽里木湖)へ、セリム湖から少し南へ下がり、イーニン(伊寧)へ、イーニンから天山山脈の中を東向きにイーニン→新源へ進み、新源から空路をウルムチへと戻るものです。
(石河子付近の綿畑)
旅の2日目、ウルムチからクイトンへの道は、左に天山山脈、右に畑と草原が広がります。この地は、近年、開拓が進み、桃、梨などの果樹がちょうど花の季節を迎えていました。広々とした畑には、綿の種を撒いています。遠くの草原には、馬、牛、羊が、点々と見えました。
クイトンの独山子峡谷は、天山から流れてくる川が削った長く深い谷です。谷は、赤、緑、黄などの岩石でできていて、岩の色も谷の深さも大陸的で雄大です。その川岸には、チューリップの原種が咲いていました。全体の高さが5pくらいの本当に小さな花です。
(クイトン 独山子峡谷)
(クイトン 独山子峡谷
チューリップの原種)
(クイトン 独山子峡谷付近の草原)
旅の3日目、クイトンから、西へ約380kmのセリム湖に向かいます。標高2073mにあるセリム湖は、まだ冬で、湖面には厚い氷がありました。
セリム湖には、流れ込む川も、流れ出る川も無く、天山山脈の伏流水が湖底から湧き出ているそうです。そのため、湖水は、塩分を含むとのこと。湖面の氷は、少し青色がかっています。
観光中に雪が降り、強い風も吹き、凍える寒さで、持っていった服を7枚も重ねて着ました。寒さの中でも、目の前の天山の雪の白さと青い湖水の美しさには、ため息がでました。
セリム湖から南に向かい到着したイーニンの街は、天山山脈の中の盆地にあります。かつて、新疆の中心だったところで、ウィグル族のバザールなどもあって、シルクロードの繁栄を思わせる賑やかな街でした。
ウィグル族の人たちは陽気で明るく、私たちが日本人の観光客と分かると、「ヤポーン」「ヤポーン」と声をかけてきます。そして、ウィグル族の若い女性たちの彫の深い顔立ちと大きな瞳は、神秘的で本当に美しいです。
(セリム湖西岸)
(セリム湖西岸)
旅の4日目、イーニンから、天山山脈の中を流れるイリ川に沿って、約200km東にある新源という小さな町へと向かいました。
イリ川は、天山からの支流を集め大きな川になって国境を越え、カザフスタンのバルハシ湖に注ぐ川で、天山山脈の中に広い草原をつくりだしています。天山山脈の中を行くバスの両側に、雪の山々が見えました。
(イリ川)
旅の5日目、新源にある、カザフ族の放牧地ナラディ(那拉提)大草原の観光です。
ナラディ大草原の中でも特に標高の高い「空中草原」と呼ばれる草原には、まだ雪がありました。ここは、夏の放牧地です。寒さの中、高さが5pくらいのユリ科のコルチカム・イヌサフランが蕾をつけていました。ほかにも、所々で、濃い黄色の花や薄黄色の花が咲いていて、この後、次々に咲くと、空中草原は花で覆われることでしょう。空中草原よりも少し標高の低い河谷草原では、春の放牧が始まっていました。
(ナラディ自然風景区 空中草原 ユリ科・コルチカム・イヌサフラン)
(ナラディ自然風景区 空中草原 天山)
(ナラディ自然風景区 空中草原 キンポウゲの仲間 左。ユリ科の花 右)
(ナラディ自然風景区 空中草原 )
(ナラディ自然風景区 空中草原 河川草原)
旅の6日目、新源から空路で天山を越えて、ウルムチに戻ります。最近の中国では、地方都市を結ぶ航空路線の発達が目覚ましく、旅がとても便利になりました。
バスの中から右に左にいつも見ていた天山山脈の姿は、飛行機から見下ろしても絶景でした。
(新疆からウルムチに向かう飛行機の中から望む天山)
(ウルムチから天山を望む)
旅の7日目、ウルムチからの天山の姿を目に焼き付けて、帰ってきました。
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